小説「新・人間革命」  1月14日 SGI10

 東南アジアの代表は、さらに思索を続けた。

 ――創価学会の初代会長牧口先生、第二代会長戸田先生の精神を受け継ぎ、その教えのままに実践し、構想をことごとく実現してきたのが、第三代会長の山本先生だ。

 私たちは、山本先生を通して、牧口先生、戸田先生の精神を知り、また、日蓮仏法を正しく学ぶことができた。さらに、山本先生によって、世界広宣流布の種は蒔かれ、各国・地域とも、希望の前進を遂げてきた。

 つまり、どこの組織も、山本先生の指導と励ましを養分として人材が育ち、広宣流布の発展の歴史を刻んでいる。

 したがって国際的な機構をつくるといっても、大事なことは、山本先生に指導を仰ぐことができ、創価学会の精神を継承できる組織を誕生させることではないか――。

 彼は、平和会議の準備にあたるなかで、その考えを語った。

 南米の代表が言った。

 「私もそう思います。

 これまで各国に結成された法人は『創価学会』という名称を使ってきませんでした。そのなかで学会の心が忘れ去られ、広宣流布に生きる師弟の精神が、薄らいできている気がします。これではいけないと思います」

 海外では「創価学会」という名称を聞いて、仏教団体であると思う人はほとんどいなかった。また、「創価学会」という名を知っている人でも、日本では学会が母体になって公明党が結成されたことから、学会を政治団体であるかのように考えている人もいた。

 そうした誤解から問題が生じないように、各国・地域では法人名に創価学会の名称を使うことは避けてきたのである。

 たとえば、香港の法人は「香港仏教日蓮正宗」とするなど、仏教団体であることがわかる名称を用いてきたのだ。

 南米の代表は言葉をついだ。

 「私は、広宣流布の使命を担っていくうえで、最も大事なことは、学会精神に立つことだと思います。生き生きと学会精神が脈動していることが一切の源泉ではないでしょうか」

 ――「偉大なる富も強大なる帝国も、やがては塵芥となるであろうが、精神の所産は不朽の価値を持っている」(注)とは、詩聖タゴールの真理の言葉である。



引用文献:  注 『古の道 タゴール講演集』北レイ吉訳、プラトン社=現代表記に改めた。