小説「新・人間革命」SGI11  1月15日

今度は、ヨーロッパの代表が、力を込めて語り始めた。

 「入会前、私は、仏教というのは、基本的には過去の遺物で、せめて心を安定させる一助になるぐらいのものと思っておりました。

 しかし、山本先生は、仏法が生命尊厳を説く、平和の根本的な哲理であることや、人間革命の道を説き明かしていることなどを教えてくださいました。また、生命の変革を機軸にした社会建設の原理も、私たちに教えてくださった。

 つまり、先生は仏法の真義を、現代人にわかりやすく示してこられた。それによって、広宣流布の世界的な広がりがつくられたといえます」

 アメリカの代表が頷きながら言った。

 「その通りですね。

 山本先生は、民音をはじめ、創価大学や富士美術館などを創設され、広宣流布とは人間文化の開花であり、仏法を根底とした大文化運動であることも教えてくださった。

 大聖人の仏法への共感と理解を世界に広げていくには、こうした展開がなくてはなりません。

 でも、それは、私たちにはできない。広宣流布の指導者に、山本先生に、教えていただくしかないと思います。

 また、運営的な問題は、皆で話し合って進めていけばよいが、信心を学ぶには師匠が必要です」

 すると、日本の青年部の幹部が、相づちを打ちながら言った。

 「私も同感です。そう考えますと、創価学会の精神、師弟の道を学ぶことができ、さまざまな面で指導を求めることができる国際的な組織と、指導者が必要不可欠ということになる。

 すると、これまで私たちが準備を進めてきたIBL(国際仏教者連盟)という互助組織的な連盟では、不十分ということになりますね」

 皆が頷いた。

 青年部の幹部は確認するように語った。

 「では、IBLの規約案などを改めなくてはなりませんね……」

 それを制して、メンバーの一人が提案した。

 「IBLはそのまま発足させ、同時に創価学会としての国際機構をスタートさせればよいのではないでしょうか。

 でも、これは山本先生のご意見を伺い、そのうえで話し合うようにしてはどうでしょうか」