小説「新・人間革命」 SGI12  1月16日

 「IBL(国際仏教者連盟)のほかに、創価学会の精神を学び、指導を受けることのできる国際機構をつくっていただきたい」

 海外の代表たちの意向を聞いた山本伸一は思索を重ねた。

 彼も、メンバーが学会に脈打つ精神を学び、さまざまな指導を受けることのできる国際機構の必要性を感じていたのだ。

 しかし、それは、あくまでも、各国のメンバーの、強い主体的な意思によるものでなければならないと考えていた。

 “各国・地域では、法人をつくり、それぞれの国や地域のルールに則って自主的に運営し、活動を推進してきた。その自主性は最大限に尊重されなければならない。

 そのうえで、さらに深く仏法を研鑽し、学会の精神を学ぶために、指導やアドバイスを受ける機関の設置を強く求めているならば、IBLとは別に、国際機構を発足させることもありえよう”

 だが、伸一は、すぐには結論を出さなかった。本当にそれが、各国のメンバーの要請なのかを見極めたかったのである。

 “信仰を貫き、深めていくことは、人間の最高の自発性の発露である。その信仰を触発し、指導するための機構であるならば、皆の強い自発的意思の総和によって結成されなくてはならない。

 したがって、もしも、世界のメンバーが、その国際機構を、お仕着せのように思ってしまうならば、本来の意義を失ってしまうことになる”

 伸一は、そう考えていたのである。

 一九七五年(昭和五十年)一月六日、伸一は結論を保留にしたまま、アメリカ訪問に出発した。

 アメリカでは、しばしば幹部との懇談会をもった。その時、アメリカの草創期を切り開いてきた日系人の婦人は、切々と訴えた。

 「私を支えてきたものは、人生の師である山本先生との誓いであり、弟子としての誇りでした。師弟が信仰の力でした。

 この師弟の心をメンバーに伝えたいのですが、アメリカ社会では、仏法で説く師弟という考えを伝えることは容易ではありません。

 日本で研修会などを開いて、創価学会の師弟の道について、お教えいただきたいのです」