小説「新・人間革命」 SGI13  1月17日

 アメリカ訪問中の山本伸一のもとには、第一回「世界平和会議」の開催を喜ぶ、世界各地からの手紙も届けられた。

 フィリピンに住む日本人メンバーの便りには、こう記されていた。

 「世界平和会議が開催されると聞いて、喜びで胸がいっぱいです。

 私の住んでいる地域の人たちは、戦時中の日本軍への根強い反発があります。『日本軍は大学に踏み込み、暴虐の限りを尽くした』と、涙ながらに訴える方もおります。

 したがって、日本人に対しても、日本の宗教に対しても否定的でした。

 私は懸命に、その軍部政府と戦い、殉教した牧口先生のことや、共に投獄された戸田先生のことを語りました。

 さらに、戸田先生は、仏法の理念のもとに『地球民族主義』を提唱し、『原水爆禁止宣言』を行ったことも伝えました。学会が多くの民衆を蘇生させ、新たな平和社会建設の波を起こしてきたことも訴えました。

 すると、周囲の方たちの態度は、大きく変わっていきました。『日本にそんな仏教団体があったのか』と言って、創価学会に対する、理解と認識を新たにしたのです。

 学会の真実の姿をそのまま伝えていくならば、日蓮大聖人の仏法への正しい理解が可能になることを実感いたしました。

 学会本部からも講師の方を派遣していただき、創価学会の歴史や運動を教えていただければと思う次第です」

 伸一は、IBL(国際仏教者連盟)とは別に、国際機構を発足させることについて、同行の幹部にも意見を求めた。

 国際センターの事務総長である田原薫は、強く主張した。

 「IBLは、どちらかといえば、各国のメンバーが互いに連携を取り、支え合い、スクラムを組むための国際機構といえます。

 それも、大事ではあると思いますが、今、最も必要としているのは、学会の精神を学ぶことができる機構です。いわば、信心の充電器ともいうべき組織です。まさに創価学会の国際機構です。

 その意味から、今回、ぜひ創価学会インタナショナルを発足させ、山本先生に指揮を執っていただきたいと思います。それが、世界各国のメンバーの願いであり、要望です」