小説「新・人間革命」 SGI14  1月18日

田原薫は、国際センターの事務総長として、各国・地域の法人やメンバーの支援にあたり、さまざまな声を聞いてきた。

 田原が訴えたSGI(創価学会インタナショナル)の結成は、その結論であった。

 山本伸一は、熟慮を重ね、アメリカのマリブ研修所での懇談の折、自分の考えを田原に告げた。

 「私が創価学会インタナショナルの会長として指揮を執ることについては、最終的には世界平和会議の参加者に諮って決めよう。もし、みんなが賛成であれば、創価学会インタナショナルの会長となります」

 その言葉を聞くと、田原は叫ぶように言った。

 「先生、ありがとうございます!」

 人類の平和と幸福を担い立つ真の人材を育てようとする伸一の、ほとばしる思い。そして、仏法の師匠を求め抜く、世界の同志の一途な思い――その師弟の心の結合がSGIを誕生させ、山本SGI会長という世界の創価学会の柱を打ち立てることになったのだ。

 世界平和会議が行われる一月二十六日の早朝、伸一はグアムの海岸に立った。

 彼は、一九五四年(昭和二十九年)の夏、戸田城聖と共に、戸田の故郷・厚田村(当時)を訪れた日のことを思い起こしていた。

 ――戸田は、夕日に染まる日本海を眺めながら、伸一に言った。

 「ぼくは、日本の広宣流布の盤石な礎をつくる。君は、世界の広宣流布の道を開くんだ」

 伸一は、それを遺言の思いで聞いた。

 今、彼は、その言葉をかみしめながら、心で戸田に語りかけていた。

 「先生! 本日、世界五十一カ国・地域の同志が集い、世界平和会議を開催いたします。広宣流布は、先生の世界平和の叫びは、全世界に広がりました。

 私は、今日の世界平和会議で、創価学会インタナショナルの会長となって、名実共に世界広宣流布の指揮を執ることになると思います。先生の分身たる伸一は、いよいよ世界に飛翔します」

 そして、この日、伸一は、全メンバーの総意をもって、SGI会長に就任したのだ。

 それは、広宣流布の歴史を画す新しき旭日が躍り出た瞬間であった。