小説「新・人間革命」 SGI20  1月25日

山本伸一は、さらに、対談の最終日にトインビー博士にアドバイスを求めた際の、博士の言葉を紹介した。

 「博士は大きく手を振って『何もない』と答えました。私は学者であり、実践家ではない、意見を述べるなど、おこがましいと言うのです。

 そして、『世界の人びとのために、仏法の中道哲学の道を、どうか勇気をもって進んでください』と言われました」

 また、伸一は、ワルトハイム国連事務総長との会談にも触れた。

 その折、事務総長が「あなた方の理念をよく知り、検討し、平和の実質的機構としての国連の運営に反映させていきたい」と語っていたことを伝えた。

 参加者は、世界の期待を、ひしひしと感じた。

 「創価学会は、物質主義に対する宗教の、そして戦争に対する平和の、勝利をもたらす大いなる希望である」(注)とは、ヨーロッパ統合の父クーデンホーフ・カレルギーの洞察である。

 皆の顔は紅潮し、その目は、生き生きと決意に燃え輝いていた。

 伸一の言葉に熱がこもった。

 「ともかく地平線の彼方に、大聖人の仏法の太陽が、昇り始めました。

 皆さん方は、どうか、自分自身が花を咲かせようという気持ちでなくして、全世界に妙法という平和の種を蒔いて、その尊い一生を終わってください。私もそうします。

 私は、ある時は同志の諸君の先頭にも立ち、ある時は側面から、ある時は陰で見守りながら、全精魂を込めて応援していくでありましょう」

 最後に、彼は力強く呼びかけた。

 「どうか勇気ある大聖人の弟子として、また、慈悲ある大聖人の弟子として、また、正義に燃えた情熱の大聖人の弟子として、それぞれの国のために、尊き人間のために、民衆のために、この一生を晴れ晴れと送ってください!」

 伸一の言葉が各国語に訳されると、場内に雷鳴のような拍手が起こった。皆、手が赤くなるほど、いつまでも拍手を送り続けた。

 この日、この時、このグアムの地で、世界の同志は、伸一と共に、創価学会インタナショナル会長と共に、その弟子たる誇りに燃えて、平和のために立ち上がったのだ。



引用文献:  注 齋藤康一著『写真 池田大作を追う』(所収のクーデンホーフ・カレルギーの言葉)講談社