小説「新・人間革命」 SGI19 1月24日

山本伸一は、世界五十一カ国・地域から集った参加者の労を深くねぎらい、世界平和会議の意義について語っていった。

 「ある面から見れば、この会議は小さな会議であるかもしれない。また各国の名もない代表の集まりかもしれません。

 しかし、幾百年後には今日のこの会合が歴史に燦然と輝き、皆さんの名前も、仏法広宣流布の歴史に、また、人類史に、厳然と刻まれゆくことを私は信じます」

 確信に満ちあふれた伸一の言葉であった。

 ビクトル・ユゴーは、こう叫んでいる。

 「われわれには確信があるのだから、なにを恐れることがあろう?

 河が逆流しないように、思想も逆流などしない」(注)

 それは、伸一の思いそのものであった。

 続いて彼は、現在、世界は軍事、政治、経済という力の論理、利害の論理が優先されることによって平和が阻害され、常に緊張状態に置かれているのが実態であると指摘した。

 そして、こうした平和阻害の状況を打破し、人類を統合し、平和への千里の道を開く力こそ、高等宗教であると訴えた。

 伸一は、ここで「異体同心なれば万事を成し」(御書一四六三ページ)の御文を拝した。そして、生命尊厳の哲理を根本に、各国の民衆が団結して進んでいった時に、必ず永遠の平和が達成されると強調した。

 さらに伸一は、トインビー博士との対談の折、戦争の歴史であったこの世界を、どのようにして世界国家、世界連邦へと統合するかについて語り合ったことを述べた。

 「博士は、世界国家、世界連邦がまずできて、その段階で世界宗教が広まり、やがて理想的な社会が達成されるであろうと述べておりました。

 しかし、私は、世界宗教が広まった後に、世界国家、世界連邦という人類の理想的な社会が達成できるのではないかと主張したのであります」

 伸一は、博士がこの対話を通して、“将来、地球的規模で人類の統合がなされる時には、世界宗教が広まることが重要な役割を果たすであろう”との考えに立つようになったことを紹介した。

 そこには、トインビー博士の、人類を結ぶ新しき「世界宗教」に寄せる、大きな期待があった。



引用文献:  注 「レ・ミゼラブル」(『ヴィクトル・ユゴー文学館4』所収)辻昶訳、潮出版社