小説「新・人間革命」 SGI37  2月15日

柯文隆の後を継いで、マレーシアの本部長となったのが、弟の柯浩方であった。さらに、一九八四年(昭和五十九年)にマレーシアの創価学会が全国法人を取得すると、浩方は初代の理事長となった。

 柯文隆は「未来のために、青年を育ててください」との山本伸一の指導を忠実に実践してきた。その精神は、マレーシアのよき伝統として、浩方にも受け継がれた。

 よき精神が、生き生きとして継承されている組織は強い。ましてや青年を大切にし、育んでいこうという心が脈打ち、流れている組織には行き詰まりはない。永遠の発展がある。

 柯浩方は、マレーシアから創価大学に留学したメンバーと、自分が来日するたびに、食事を共にしながら、こう言って激励してきた。

 「私も、若ければ、山本先生がつくられた創価大学で勉強したかった。しかし、残念ながらそれはできない。そういう思いをいだいている、壮年や婦人は数多くいると思います。

 あなたは、私たちに代わって創価大学に留学された。それは私たちマレーシア同志の誇りです。

 どうか、創立者の山本先生のもとで、しっかり勉強してきてください」

  

 山本伸一が念願のマレーシア訪問を果たしたのは八八年(同六十三年)の二月のことであった。

 マレーシア文化会館を訪れた伸一は、柯文隆の夫人と共に、柯文隆の功労を讃えて、庭に記念の植樹をした。

 伸一は言った。

 「本当に偉大な方でした。柯文隆さんによってどれほど多くの方々が励まされたことか……」

 夫人は、目を潤ませて語った。

 「もう、なんの悔いもありません。山本先生がすべてわかってくださっているのですから」

 また、そこには見事に育った多くの青年たちの姿があった。柯文隆、そして柯浩方が、全精魂を込めて育んできた結晶の若き人材たちであった。

 「成長しゆく世代の人々は未来そのものです。その青年を教育しているあなた方は、未来に対する準備をしているのです」(注)とは、ユゴー箴言である。

 青年を育ててこそ、人道と平和の流れは永遠の大河となるのである。





引用文献: 注 『THE LETTERS OF VICTOR HUGO』,EDITED BY PAUL MEURICE,University Press of the Pacific Honolulu,Hawaii