小説「新・人間革命」 SGI43  2月22日

 ガーナで南忠雄は、メンバーの家を激励に回った。皆、歓待して、水を出してくれた。

 どの家も生水である。南は飲むと、必ず腹をこわした。

 三カ月ほどしたころであった。風邪をひいたような感じの熱っぽい状態が続き、それから悪寒と震えに襲われた。

 熱を測ると四〇度を超えていた。

 マラリアである。予防薬を飲んでいたが効かなかったようだ。意識も朦朧となり、立ち上がることもできなかった。

 薬を飲み、やがて熱が下がり始めたが、三八度五分ほどの熱が十日間ほど続き、強い倦怠感にさいなまれた。

 南がマラリアで倒れたという話は、現地の中心者を通して学会本部に伝えられた。

 その報告を聞いた山本伸一は、南の健康回復を祈って唱題した。そして側近の幹部に、何度となく、「南君は、それからどうなった」と尋ねるのである。

 しかし、電話もなかなか通じないために、学会本部には、その後の連絡は入っていなかった。

 伸一は、周囲の幹部につぶやくようにいった。

 「私は、戦地に行った兄たちから、マラリアの苦しさを聞いてる。だから、彼のことが心配で仕方ないんだよ」

 伸一にとっては、南もまた愛しい弟子の一人である。

 アフリカの地に勇んで飛んでいった健気な愛弟子が病に伏していることを思うと、彼の胸は激しく痛むのであった。    

 世界平和会議で一年ぶりに南の顔を見た伸一は、包み込むような笑顔で語った。

 「南君、マラリアには注意するんだよ。心配したんだよ。

 ところで、ここに来る前に、マリブの研修所でアフリカの代表と会った時に提案したんだが、ガーナに会館をつくってはどうかね。アフリカ最初の会館だ。

 みんなで相談して、ぜひ実現してほしい」

 南は、元気いっぱい、「はい!」と答えた。

 伸一はガーナのメンバーに、前進の目標を示したかったのである。

 目標があれば希望がわく。希望があれば勇気がわき、活力がみなぎる。

 そこに、目標を立てて前進することの、一つの意味がある。