小説「新・人間革命」 人間外交21 3月26日

 「ようこそ! よくいらっしゃいました」

 山本伸一は、入寮式で中国人留学生を真心の握手で歓迎し、それからマイクを取った。

 「新入生の皆さん、入寮おめでとう。

 特に中国からの留学生の皆さんは、わが創価大学に来られ、日中友好のため、世界の平和のために、事実上の第一歩を印されました。

 本日は、中国の未来を担う優秀な友を迎える最も記念すべき歴史的な日であります。私は、なんとしても皆さんにお会いしたいと思い、駆けつけてまいりました」

 伸一は留学生一人ひとりに視線を注いだ。皆、勤勉そうな青年であった。

 彼は思った。

 “私がつくった創価大学に、中国から留学生として来てくださった方々である。何があろうが、この青年たちを守り抜き、一段と成長した姿で中国に帰っていただくのだ。そうしなければ、周総理に申し訳ない”

 学校は、学生のためにある。ゆえに、創立者も教師も、学生に仕えるためにいるのだ――それが伸一の哲学でもあった。

 彼は言葉をついだ。

 「青年時代の一年一年は貴重です。黄金にも匹敵します。

 どうか、留学生の皆さんは、在学中に広く日本文化を学習するとともに、人格の完成をめざし、有意義な学生生活を送ってください」

 さらに伸一は、日本の新入生に語りかけた。

 「日本の皆さんは、この留学生との友情を軸にして、未来永劫にわたって中国の友人となり、強く美しい絆で結ばれた、友誼の歴史を築いていっていただきたい。

 それこそが、この寮で学ぶ、人生の大きな財産となります。もはや、友情は世界に広がらねばならない時代です」

 そして、前年の十二月に周恩来総理と会見した模様に触れながら、日中友好の「金の橋」を永遠ならしめようと訴えた。

 入寮式の後、伸一は留学生と懇談した。六人の留学生のうち、一人はまだ日本に到着していなかった。

 皆、日常の会話なら、日本語で上手に話すことができた。

 伸一は、皆のために用意しておいた、革表紙の特製ノートを贈った。

 「ここに、創大で学んだ勉学の歴史をとどめてください」