小説「新・人間革命」 人間外交22 3月27日

山本伸一は中国の留学生と懇談した後、桜の咲く、夜のキャンパスを自ら案内した。

 伸一は提案した。

 「皆さんと初めて会った、この四月七日を、記念の日として永遠にとどめたいと思いますが、いかがでしょうか」

 留学生の顔に微笑みがこぼれた。

 さらに、一緒に記念のカメラに納まった。

 「何か困ったことや要望がありましたら、遠慮なく言ってください。ここは皆さんの家であり、母校なんですから」

 伸一は、固く心に誓っていた。

 “一人たりとも落胆させまい。暗い思いで、創価大学を去っていく留学生など、絶対に出すまい。皆、最高の思い出をつくってほしい……”

 散策の後、彼は教職員と学生たちに言った。

 「中国から選ばれた優秀な学生です。私は大切な家族だと思っています。くれぐれもよろしくお願いします!」

 誰もが伸一の並々ならぬ心配りに感動を覚え、自らに言い聞かせるのであった。

 “この山本先生の心をわが心として、留学生と接していこう!”

 友好や平和といっても、彼方にあるのではない。身近な一人に、どんな思いで接し、何をするのかにかかっている。そこに平和への道がある。  

 伸一は、翌八日にも、留学生を創価学園に招待し、第八回となる入学式に、共に出席した。

 入学式の後には、「中国同朋歓迎スポーツ大会」として、親善卓球大会が行われた。

 留学生は、ラケットさばきも巧みであった。

 団体戦では、教職員チーム、学園生チームを次々と破って優勝した。

 個人戦には、伸一も出場した。トーナメントを勝ち抜いて残った伸一と留学生の許金平の優勝決定戦となった。

 変化に富んだ許のサーブに、伸一は的確なレシーブで応戦。抜きつ抜かれつの激戦であった。

 そして、最後は、二十一対十八で伸一が優勝したのである。

 伸一は許に言った。

 「緊張して、今日は実力を出し切れなかったみたいだね」

 「いいえ。先生が強かったのです。これは実力の差です」

 そして、和やかな語らいが弾むのであった。