小説「新・人間革命」 共鳴音1 5月19日

 烈風の  会長就任  十五歳 断固と指揮執る 五月三日よ

   

 一九七五年(昭和五十年)五月三日は、山本伸一の会長就任十五周年の佳節であった。

 彼が第三代会長に就任して以来、創価学会は未曾有の大発展を遂げ、十五年前と現在とでは、隔世の感があった。

 伸一の会長就任時には会員世帯も百四十万ほどであったが、今や、事実上、日本第一の大教団に発展し、世界各地にメンバーのスクラムは広がっていた。

 また、東京の創価中学・高校、創価大学、大阪の創価女子中学・高校、民音、富士美術館などが相次いで創立され、教育・文化面でも、社会に大きく貢献してきた。

 さらに、政治の分野では公明党が結成され、福祉をはじめ、民衆のための政治を推進し、日本の政治を支える柱の一つとなった。

 創価学会の目的は広宣流布にあり、さらには、「立正安国」(正を立て国を安んずる)の実現にある。

 「立正」とは、生命尊厳の哲理であり、人間革命の方途を示した仏法の人間主義の思想を、人びとの胸中に打ち立てることである。

 そのための実践が広宣流布である。そして、この広宣流布は、「安国」という、社会の繁栄と平和の実現をもって完結するのである。

 「安国」なき「立正」は、宗教の無力さを意味していよう。

 また、「安国」がなければ、個人の幸福の実現もない。ゆえに「立正安国」にこそ、仏法者の使命がある。

 創価学会が、この目的を掲げているのは、学会が日蓮大聖人に直結した、「人間のための宗教」であることの証明にほかならない。

 伸一は「立正安国」を実現するために、仏法の人間主義の旗のもと、教育、文化、政治など、あらゆる分野の建設に着手してきた。

 それは、苦闘の歳月であった。しかし、そこには喜びと充実があった。

 ヘレン・ケラーは、「他人のために尽そうとか、社会に新生命を打ち建てようという、私欲を離れた目的から永続的な確実な歓喜が生れる」(注)と宣言している。



引用文献: 注 「私の宗教」(『ヘレン・ケラー全集5』所収)岩橋武夫・島史也訳、三省堂=現代表記に改めた。