小説「新・人間革命」 共鳴音4 5月22日

 戸田城聖は、広宣流布のために、さまざまな難に遭い、頑張り抜いてきた同志がいると、励ましのメダルを贈った。

 また、折々に、句や和歌を作って、功績のあった弟子たちに贈っては、讃え、励ましてきた。

 さらに戸田は、いろいろな局面で青年たちの見事な働きを目にすると、さまざまな物を授けた。時には、自分が身につけていた時計や金の鎖などまで贈り、賞讃、激励することもあった。

 この戸田の精神を、山本伸一は、そのまま継承してきた。青年部のリーダーであった時から、同志の賞讃と励ましには最も心を配ってきたのだ。

 地方指導に行く際にも、貯金をはたいてノートや筆記用具などを大量に購入し、健気に奮闘する同志にプレゼントし、激励してきた。

 持ってきた品々がなくなると、彼もまた、自分が使っている万年筆や、ネクタイ、時にはベルトまで贈って励ますことさえあった。

 一度の励ましや顕彰が、人生の大きな転機となることもある。ゆえに伸一は、物を惜しむ気にはなれなかった。

 かつて戸田城聖は、彼の事業が苦境に陥り、その再建のために夜学を断念した伸一に、万般の学問の個人教授を続けた。「戸田大学」である。

 伸一は懸命に学び、ことごとく吸収していった。ある講義が修了した時、戸田は、机の上にあった一輪の花を取って、伸一の胸に挿した。

 「この講義を修了した優等生への勲章だ。伸一は、本当によくやってくれているな。金時計でも授けたいが、何もない。すまんな……」

 広宣流布の大師匠からの真心の賞讃である。伸一は、その花こそ、世界中のいかなるものにも勝る、最高に栄誉ある勲章であると思った。感動を覚えた。自分は最大の幸福者であると感じた。

  

 伸一は、後年、世界各国から、多くの国家勲章を受けている。また、大学・学術機関からは、二百数十という世界最多の名誉学術称号を受章することになる。

 彼は、その根本要因こそ、生命の因果の法則のうえから、師匠より賜った一輪の花に対する感謝と、ますますの精進を誓った「心」にこそあったと、深く、強く、確信しているのである。