小説「新・人間革命」 共鳴音8  5月27日

山本伸一は、強い口調で話を続けた。

 「戸田先生のもとで、実質的に学会を支えたのは、私を中心とした、わずか数人の参謀室でした。

 先生亡き後も、私と共にこの参謀室の青年たちが団結して、創価学会を引っ張っていきました。

 諸君にも、その自覚をもっていただきたい。しかし、決して、“自分たちは特別だ!”などという意識をもってはならない。そういう思い上がった心をもった者は、必ず退転していきます」

 伸一は、鋭い視線で参加者を見渡した。

 皆、緊張した顔で固唾をのみ、伸一を見ながら、次の言葉を待った。

 「諸君は、出世しようとか、偉くなろうとか考えるのではなく、陰の力として、うんと苦労し、広宣流布のために、黙々と頑張り続けていただきたい。

 自分の力を磨いていくならば、自然に光ってくるものです。

 戸田先生は、青年に対して『宗教家になれ』とは言われなかった。『国士たれ』と言われた。

 そこには、宗教の枠のなかにとどまるのではなく、さまざまな道に通じた指導者になってほしいとの、思いがありました。

 また、仏法の精神は、そんな狭いものではない。広く、全人類の平和と幸福を築き上げることこそ、仏法の目的です。

 ともあれ、本当の勝負は二十一世紀です。その時に、どれほど力を蓄えて、どんな働きをしているかがすべてです。

 どうか、終生、信義の絆で結ばれた同志を裏切らないでいただきたい。

 そして、英知と情熱を融合させた真のリーダーに育ってください。非難や中傷の嵐に、敢然と立ち向かう指導者になっていただきたい。

 『さあ、共に戦おう!』と申し上げ、結成のあいさつとします」

 伸一は、このメンバーには、なんとしても、自分の「志」を受け継ぐ後継者として立ち上がってほしいとの念願から、自身が第三代会長として立った、この五月三日を、「伸一会」の結成の日としたのである。

 未来は青年によって決まる。ゆえに、青年を育てるかどうかに、一切はかかっているのだ。青年こそ「人類の至宝」だ。

 伸一は、この青年たち全員を、大リーダーに育てるために、どんなことでもしようと思った。