小説「新・人間革命」  11月24日 新世紀6

山本伸一は、大田区の代表との協議会で、会館建設への思いを語っていった。

 「今までは会館建設にまで手が回らず、皆さんには、何かとご苦労をおかけしてきました。どの会館も質素で狭く、木造のものも多かった。

 しかし、いよいよ、新しい段階を迎えました。これからは、都内の各区に、鉄筋コンクリートの、立派な文化会館をどんどんつくってまいります。皆さんの会館です。また、平和と文化を創造する地域の牙城です」

 皆の思いをはるかに超えた、建設の構想である。参加者の顔は、喜びに輝いていた。

 皆の心を見抜いたように、伸一は言った。

 「皆さんは“考えもしなかった、すごいことだ! わが区に、立派な会館を幾つもつくってしまってよいのだろうか”と思われているかもしれません。しかし、広宣流布の未来の広がりを考えるならば、必要不可欠です。学会の会館は、まだまだ少ない。他の宗派と比べてみても、それは明らかです」

 伸一が言うように、他宗派の寺院・教会等の数と、学会の会館数を比べてみれば、いかに少ないか一目瞭然である。

 たとえば、天台系全体の信者数は五百四十万余で寺院・教会等の合計は四千二百余。また、真言系は信者約千二百万で寺院・教会等は一万二千四百余、浄土系は信者二千万余で寺院・教会等が三万五百余、禅系は信者一千万余で寺院・教会等が約二万となっている。<『宗教年鑑(昭和50年版)』文化庁

 学会は、このころ既に、会員数は約一千万であったが、会館は四百に満たず、いずれも小さな建物であった。

 しかも、学会の会館は、連日、同志が集い、勤行会、教学の研鑽、指導会、研修会、打ち合わせなどが行われ、その使用頻度は他宗派の寺院などと比べて極めて高い。

 それらを考え合わせると、効率的な広宣流布の活動を推進していくためには、さらに全国に会館を整備していく必要性を、伸一は痛感していたのである。