小説「新・人間革命」  11月26日 新世紀8

 東京各区などの協議会は、時には「代表者会議」「最高会議」等の名称で、次々と開催されていった。

 大田区の協議会の翌日にあたる六月六日には世田谷区、十日は第二東京本部、十二日は神奈川県、十四日は品川区、十五日は埼玉県、十六日は港区、十七日は練馬区、十九日には江東区、二十日は中野区……と続いた。

 いずれの協議会でも、会館の建設や改築をはじめ、記念行事の開催などが決まり、新しい前進の目標が打ち出されていった。

 希望を生み出すことは、価値を創造することである。勇気の火をともすことである。

 東京の協議会は、七月五日の渋谷・目黒区の協議会で早くも一巡した。

 山本伸一は、各大学会の総会への参加、識者との会談など、強行スケジュールをこなすなかで、これらの協議会に、相次ぎ出席していったのである。まさに、電光石火の行動であったといってよい。

「行動の迅速は大勝の秘訣である」(注)とは、十九世紀のイタリアの革命家マッツィーニの警句である。

 戦いはスピードだ。速さが勝負だ。行動が遅れ、打つべき時に手を打ち損なえば、未来に敗北を招くことになる。

それぞれが迅速に、今日の使命に生き、今の課題を完璧に果たし抜いていくなかに、広宣流布の大勝はある。

 この年の七月三日は、第二代会長・戸田城聖の出獄三十周年であった。伸一はこの日、東京・港区内で行われた、記念集会に出席した。

 集い合うのは、戸田のもとで薫陶を受け、戦後の草創期から共に戦ってきた、戸田門下をはじめとする三百数十人である。伸一は、その功労の同志をねぎらおうと、記念集会の形式を会食としたのである。

 彼は首脳幹部のあいさつに耳を傾けながら、“先生の出獄から三十年にして、実質的に日本第一の教団となった今日の創価学会を先生がご覧になったら、どれほどお喜びか”と思うと、目頭が熱くなるのを覚えた。



引用文献: 注 マッツィーニ著『信仰と未来』宮原晃一郎訳(杜翁全集刊行会)