小説「新・人間革命」 1月29日 潮流4

 空港の貴賓室で、州知事補佐官らと懇談した山本伸一は、宿舎のホテルに移動した。そして、アメリカの首脳幹部らと打ち合わせに入り、コンベンションの準備状況について、詳細な報告を受けた。

 このコンベンションは、翌年がアメリカ建国二百年にあたるところから、“アメリカ二百年前年祭記念コンベンション”として開催されることになっていた。

 今回のコンベンションに対して、アメリカのフォード大統領、ロックフェラー副大統領からメッセージが寄せられていた。

 大統領は、こう祝福していた。

 「わが国の建国二百年慶祝行事に参加する皆様方に、私は心からの敬意を表するものであります。

 皆様方の努力は、深い愛国心アメリカ市民としての大きな誇りを象徴しております。

 それは、同時に、わが国のバイタリティーと精神を表しています。

 私は、われらアメリカの二百回目の誕生日を、全国民の記念すべき歴史的行事とすべく尽力される皆様方の献身に対して、衷心より歓迎の意を表します」

 メッセージを聞いた伸一は、力強い声で語った。

 「これは皆さんが、アメリカ社会で着実に信頼の輪を広げてきた実証です。

 広宣流布というのは、広い意味では、社会の人びとが仏法の人間主義に賛同していくことです。

 それには、皆さん方一人ひとりが、そして、SGIという存在が、大きく友情を広げ、社会に深く根を張り、人びとの信頼を勝ち取っていかなければならない。

 ここには、その勝利の象徴的な一つの姿があります」

 思えば、アメリカを初訪問した伸一が、各地で訴え続けたことが、「良きアメリカ市民に」ということであった。

 それが今、十五年の歳月を経て、美事に花開いたのである。