小説「新・人間革命」  2月19日 潮流21

ワイキキの海に、突然、現れた巨大な物体を、観光客は興味津々の面持ちで見ていた。

 台船の位置が決まり、浮島ステージが無事に設置されると、浜辺から歓声があがった。

 ホテル六階の指揮室に詰めていたスタッフも、その瞬間、皆で握手を交わし合った。

 浮島での突貫作業が始まった。鉄骨を積んだ台船の島は、一夜明けた時には、岩山がそびえる島に変わっていた。

 ――山本伸一がワイキキの浜辺で浮島の説明を受けていたころ、メンバーは設営作業の総仕上げに、全力を注いでいたのである。

 その浮島に一艘のボートが近づいていた。地元テレビ局が取材にやってきたのだ。

 ニュースキャスターらが浮島に上がった。責任者の話を聞きたいという。

 カメラが回り始めた。突然の取材である。広報関係のスタッフが不在であったために、舞台設営の責任者であるチャーリー・マーフィーが応対した。

 キャスターは、「メンバーは、どこから集って来るのか」「全部で何人集まるのか」「どうして仏教徒が、アメリカの建国二百年を祝うのか」などを尋ねたあと、皮肉めいた口調で言った。

 「こうした浮島を造るには、相当の費用がかかっていると思います。そのお金を、ベトナムの孤児とか、世界の恵まれない子どもたちを助けるために使おうとは思いませんか」

 マーフィーは確信をもって答えた。

 「そうした活動も、もちろん大事です。

 でも、そのためには、市民の一人ひとりが、勇気と希望をもって、平和のために行動していこうという心を、呼び覚ましていくことが必要です。つまり、多くの市民に、生命の輝き、生命の尊さを伝え、平和への決意を触発するメッセージを送ることです。

 それがあってこそ、平和への大きな潮流が広がっていきます。その催しこそが、このコンベンションなんです」

 彼の回答にキャスターは納得したようだ。