小説「新・人間革命」  2月23日 潮流24

山本伸一が、コントロールセンターを視察した七月二十三日には、日本での夏季講習会に参加していたアルゼンチンのメンバーや、広島のメンバーなど、交流団が次々と到着した。

 この夜、伸一は、交流団の代表を宿舎のホテルに招いて、懇談のひと時をもった。

 最初にアルゼンチンの代表に声をかけた。

 「遠いところ、大変にご苦労様です。もっと時間を取って懇談したいのですが、その時間がないもので申し訳ありません」

 そして、用意しておいた土産を手渡すと、力を込めて語り始めた。

 「せっかくの機会ですので、信心の要諦について、話をさせていただきます。

 信心したからといっても、人生に平坦な道などありません。むしろ、苦楽の起伏があり、波浪も逆巻くのが、人間社会の実相です。苦しいこと、辛いこと、悲しいことがあって当然です。

 その時こそ、ただひたすら、題目を唱え抜いていくんです。そうすれば、仏法の法理に照らして、必ずや打開できることは間違いない。それを生涯にわたって繰り返し、広宣流布のために戦い続けていくなかに、人間革命があり、絶対的幸福境涯を築き上げていくことができる。それが信仰の道です。

 だから、何があっても、信心から離れるようなことがあってはならない。

 また、広宣流布を進めるうえで重要なのは団結です。ともすれば人間は、慣れてくるとわがままになり、自分のエゴが出てくる。そして、派閥をつくったり、組織を自分のために利用しようとするようになる。

 それが、大聖人が仰せの『外道・悪人は如来の正法を破りがたし仏弟子等・必ず仏法を破るべし』(御書九五七ページ)の姿なんです。

 わがままな自分と戦い、広宣流布のために心を合わせ、団結していこうという一念のなかに、信心の血脈がある。仲良くしていくことが、信心の鉄則です。

 今日は、この点を確認しておきます」