小説「新・人間革命」  2月24日 潮流25

山本伸一は、さらに広島の代表にも語りかけた。

 「広島の皆さんは、よく頑張ってくださった。しかし、本格的な戦いはこれからです。

 広島といえば、平和の原点ですが、その平和を創造するための生命の哲学を発信していけるのは、私たちしかいません。

 “原爆は悲惨である。戦争なんて絶対に起こしてはならない”ということは、誰もが思う。では、“そのために、どうしていくのか”“いかなる哲理が必要なのか”ということになると、皆、あいまいになってしまう。

 だから、今こそ、万人が『仏』の生命をもち、尊厳無比なる存在であることを説いた仏法を、慈悲の哲理を、世界に伝え抜いていかなければならない。

そうでなければ、平和運動といっても、画竜点睛を欠き、迷走していくことになりかねない。そして、平和創造の使命を担う中核となるのが、広島の皆さんです。今年は、その新しい出発の年だ」

 実は、この年の十一月、広島で第三十八回となる本部総会が開催されることになっていたのである。

 「私は広島の皆さんに期待しております。平和といっても、広宣流布といっても、すべては対話から始まります。徹底して語り合うことです。私もそうしてきました。人間として語らいを進めてきました。

 その結果、宗教との共存は難しいと言われてきた共産主義の国の指導者も、正しく学会を理解するようになりました。

 対話には勇気が必要です。さらに、粘り強さが大事です。そこから相互理解が始まり、共感も生まれていきます。広島の皆さんは、どうか『対話の勇者』となって、世界に本当の平和思想を広げていってください」

 伸一は、さらに一人ひとりの名前や仕事などを尋ね、激励を重ねた。そして、共に記念のカメラに納まったのである。

 人は励ましによって使命を自覚し、奮い立っていく。指導者とは、わが生命を注ぎ尽くして、励まし続ける人のことである。