小説「新・人間革命」  3月20日 潮流46

山本伸一は、この全米総会で、「アロハの精神」について語ろうと決め、仏法哲理との共通項について思索を重ねてきた。

それだけに、学会の仏法運動に「アロハの精神」の昇華された姿を見るという、アリヨシ州知事の言葉に、彼は、強く共感したのである。

 諸外国からの来賓を代表して、ドミニカ共和国のゴイコ・モラレス副大統領があいさつしたあと、いよいよ伸一の登壇となった。

 ひときわ大きな拍手が、ワイキキの空に響いた。浜辺に林立するホテルの窓からも、たくさんの顔がのぞいていた。多くの観光客も、このコンベンションに、強い関心を寄せていたのであろう。

 空には、灼熱の太陽が燃えていた。その太陽のように、熱情のこもった伸一の力強い声が響いた。

 「アメリカ合衆国の未来に『平和』と『希望』をはらみつつ、朝日のごとく昇りゆくコンベンションに対し、私は歓呼して祝福を贈るものであります」

 彼はまず、建国二百年を明年に控えたアメリカへの期待を語った。

 「技術文明の大国として世界平和の指導的役割を担ってこられた貴国が、これよりは再び、自由と平和のために、精神文化の大国として、より偉大な貢献をされんことを、私は期待するものであります」

 伸一は、波濤の大西洋を越え、自由と希望の新天地を求め抜いた「建国の父」たちの精神に、理想への意志を見ていた。

また、アメリカを築き上げた「フロンティアスピリット」(開拓者精神)に、若々しい建設のエネルギーを感じていた。

 それらが、世界の平和建設に向けられ、人類の理想となる社会を開拓する力となっていくことを、彼は念願していたのである。

 過去の歴史は、未来の創造のためにある。

 「未来の世界がどうなるかは、私たちが今どのように生きるかにかかっています」(注)とは、アメリカの人権運動の母・ローザ・パークスの叫びである。



引用文献:  注 『ローザ・パークスの青春対話』高橋朋子訳、潮出版社