小説「新・人間革命」  4月15日 波濤2

「五年会」のメンバーは、十代後半から二十代後半の世代である。二十一世紀を、ちょうど働き盛りの年代で迎えることになる。

 山本伸一のメンバーへの期待は、限りなく大きかった。それだけに、信仰の最も重要な師弟というテーマについて、語っておかなければならないと、彼は思ったのだ。

 初代会長の牧口常三郎も、第二代会長の戸田城聖も、国家神道を精神の支柱にして戦争を遂行しようとする軍部政府の弾圧によって投獄された。

 戸田は、師の牧口と共に投獄されたことを、何よりも誉れとしていた。

権力への恐れなど、微塵もなかった。さらに、獄中にあっても、“罪は自分一身に集まり、牧口先生は一日も早く帰られますように”と、朝な夕な真剣に祈りを捧げている。

 戸田は、日蓮大聖人の御金言通りに、広宣流布のために戦う牧口に、勇んで随順したのだ。そこに、「日蓮と同意」という御聖訓に則った、現代における実践がある。

 また、牧口の三回忌法要の折には「あなたの慈悲の広大無辺は、私を牢獄まで連れていってくださいました」「その功徳で、地涌の菩薩の本事を知り、法華経の意味をかすかながらも身読することができました。

なんたる幸せでございましょうか」と涙した。

 戸田は、牧口という師と同じ心、同じ決意に立つことによって、地涌の菩薩としての使命を自覚することができたのだ。

 伸一は、この牧口と戸田の師弟の絆について触れ、若い魂に呼びかけた。

 「私は、その戸田先生に仕え、お守りし、共に広宣流布に戦うなかで、自分の地涌の菩薩の使命を知りました。創価学会を貫く信仰の生命線は、この師弟にあります。

 どうか諸君も、生涯、師弟の道を貫き、この世に生まれた自身の崇高な使命を知り、堂々たる師子の人生を歩み抜いていただきたいのであります」

 学会が永遠に見失ってはならない指針を、伸一は全力で伝え残そうとしていた。