小説「新・人間革命」  4月16日 波濤3

山本伸一は、翌八月四日には、創価大学での高等部の第八回総会に臨み、渾身の力を注いで指導にあたった。また、連日のように、講習会に参加した各方面の幹部や各部の代表と懇談を重ねた。

 さらに、五日には、中等部員を、六日には、少年・少女部員を見送るなどして、寸暇を惜しんで激励を続けた。

 七日は、東京男子部の代表三千人が集って講習会が行われた。そのなかで、日焼けした凛々しい顔の男たちの姿が、ひときわ目を引いた。外国航路で働く船員の人材育成グループ「波濤会」のメンバーである。

 彼らは中央体育館での全体集会に参加したあと、教室を借りて、第五回「波濤会大会」を開催。その会合が終了するころ、男子部の幹部が、息を弾ませ駆け込んできた。

「山本先生が、記念撮影をしてくださいます。校舎前のロータリーの『出発の庭』に集合してください」

 約七十人の“海の男”たちから、歓喜の雄叫びがわき起こった。半袖の白いシャツと白いトレパンのメンバーは、船員帽を誇らしげに被って、急ぎ足で移動し、待機した。

 間もなく、伸一がやってきた。

「『波濤会』だね。ご苦労様! いつも、皆さんの航海の安全を、一生懸命に祈っています。さあ、記念撮影をしましょう」

 これまで「波濤会」の代表が伸一に激励されたことはあったが、これほど多くのメンバーが、そろって会うのは初めてであった。

 皆、胸を張り、意気揚々と、記念のカメラに納まった。

 この日も、伸一のスケジュールはびっしりと詰まっていた。しかし、時間をやりくりして、「波濤会」のメンバーと、記念撮影をすることにしたのだ。

伸一は、彼らが、どんな状況のなかで信心に励んでいるかを、よく知っていたからである。

“最も大変ななかで頑張っている人にこそ、最大の激励をするのだ。それが私の責務だ”

 伸一は、常にそう自分に言い聞かせていた。