小説「新・人間革命」  4月21日 波濤7

「波濤」と書かれた色紙には、やがて十二人の船員メンバーの名前が並んだ。

 最初に署名した三人の青年は、青年部の幹部に指導を受けながら、外国航路の船員がいることがわかると、連絡を取っていった。

 さらに、彼らは、大切な後輩をしっかり育てようと、母校の学会員とも会い、激励を重ねていった。

 一九七〇年(昭和四十五年)の初夏、彼らの代表が学会本部を訪れ、男子部の幹部と懇談し、船員のメンバーの要請を伝えた。

 「外国航路の船員の代表を、夏季講習会に参加させていただけないでしょうか。

 優秀な人材が数多くおりますが、一年のうち大多数が航海で、所属組織の学会活動に参加できないために、講習会参加者には、なかなか選ばれません。

そういうメンバーに、成長の起爆剤となる機会を、ぜひ与えていただきたいのです。

 また、船員が互いに信心を触発していくための、グループをつくっていただけませんでしょうか」

 彼らは必死になって訴えた。その言葉には懸命な思いがにじみ出ていた。

 なぜ、船員のグループが必要なのかということも、きちんと説明できるように、よく考えを整理していた。

 真剣であれば、準備もまた周到になる。ゆえに、真剣さに勝る力はないのだ。

 「わかりました。男子部長とも相談し、皆さんの意向にそえるように努力します」

 その要請は、男子部長の上野雅也に伝えられ、上野から、山本伸一にも報告された。

 それを聞くと、伸一は言った。

 「大事な人材だ。ぜひ、講習会に参加させてあげたいね。また、講習会では、男子部長がメンバーと懇談もし、実情や要望をしっかり聞いて、すべて私に報告してください。

 船に乗れば、たった一人で信心に励まなくてはならない。しかし、その一人から、広宣流布の航路は開かれる。メンバーを、断じて“一人立つ丈夫”に成長させることです」