小説「新・人間革命」  5月21日 波濤32

「波濤会」のメンバーのなかから、『聖教グラフ』の「波濤を越えて」に連載された写真のパネルを展示し、写真展を開いてはどうかという意見が出された。

 “不況で低迷する日本の海運業界を勇気づけたい”“船員たちに、「海の男」の気概を忘れず、人生のあらゆる試練に挑戦していく契機にしてほしい”との気持ちから発した提案であった。また、

これによって、「船員文化」ともいうべきものが伝えられればとの思いもあった。 

 「波濤会」のなかで、写真展開催の意見がまとまると、彼らは山本伸一に、自分たちの考えと決意を伝える手紙を認めた。

 伸一は、手紙を読むと、峯子に言った。

 「すごいことだね。『波濤会』のメンバーは、自分たちの明日が、どうなるかもわからないような状況のなかで、海運業界を元気づけようというのだ。その心意気が嬉しいね。これが、学会の精神だ。

 学会の草創期、学会員は、みんな貧しく、病気や家庭不和などの悩みをかかえていた。

 しかし、そのなかで、自分たちが日本中の人を幸せにするのだといって、意気揚々と折伏に走った。自分の悩みなど突き抜けて、友のため、社会のために、懸命に戦ってきた。

 そのバイタリティーが、広宣流布の波を広げ、社会を活性化していった。また、そうした活動のなかで、学会員は自分の境涯を高めて、悠々と悩みを乗り越えていった。大事なことは心意気だ」

 峯子が、微笑みながら答えた。

 「世の中の人たちは、自分のことだけで汲々としているなかで、同志の皆さんは、人びとのことや社会のことを考えています。

地涌の菩薩の心を感じます。時代の闇が深くなればなるほど、こうした学会員の存在は、ますます輝いていきますね」

 伸一は、頷いた。そして、「波濤会」の手紙を持ってきた幹部に言った。

 「みんなに伝えてください。『了解しました。頑張ってください。応援します』と」