小説「新・人間革命」  5月22日 波濤33

山本伸一からの伝言を聞いた「波濤会」のメンバーは、燃えた。

 写真展は、「波濤を越えて――働く海の男の写真展」のタイトルで、一九八七年(昭和六十二年)七月十二日から十九日まで、横浜にある、日本丸メモリアルパークの訓練センターで開催されることが決まった。

 彼らは、会社の社長や上司、同僚、組合関係者、海運の各種団体などを回っては、写真展の趣旨を訴え、出席を呼びかけた。

 「今、海運業界は不況です。だからこそ、海運の仕事に従事する人たちに、希望と勇気と誇りをもってもらおうと、この写真展を企画しました。写真には、海を愛する人間の気概があふれていると自負しています」

 海運会社の、ある重役は言った。

 「頼もしい限りだね。ところで、どうして君たちは、そうした考えをもつようになったのかね」

 メンバーは、胸を張って答えた。

 「ただ苦境を嘆くのではなく、自分が主体者となって、事態を転換していくのだというのが、仏法の教えであり、創価学会の山本先生の指導なんです。

私たちも、仏法を持った者として、業界が大変な時だけに、なんらかのかたちでエールを送りたいと思いました」

 重役は、感心したように頷いた。

 「そうか。そういう思いの社員がいてくれるとは、ありがたいね。写真展には、必ず行かせてもらうよ」

 写真展では、『聖教グラフ』で連載された四十点の写真のほかに、新たに二十五点の写真が加えられた。

開幕式には、東京商船大学(当時)の学長や日本船長協会の会長をはじめ、多くの海運関係者が出席。鑑賞者は最終的に二千人を超えた。

 「勇壮な心意気があふれていますね。心が晴れ晴れとして、元気が出てきます」「世界は海で結ばれており、地球は一つなんだということを感じさせます。平和の心がある」など、賞讃の声が寄せられたのである。