小説「新・人間革命」  5月25日 波濤35

山本伸一は、「波濤会」の第二回の写真展が開幕した七月二十日、横浜の神奈川文化会館を訪問していた。

 この日、彼は、「波濤会」の代表を会館に招いて共に勤行し、翌日には、短時間であったが、出発前に代表と懇談した。

 船員の制服に身を包んだ、メンバーの姿が凛々しかった。

 伸一は笑顔で語りかけた。

 「写真展のことは、聞いているよ。行けなくって申し訳なかったね。

 すばらしい写真がたくさんあるらしいね。長男からも、詳しく報告を受けています。

 『波濤会』の写真展のような企画は、おそらく世界にもないでしょう。大変な評判になっています。

 これからも毎年やっていこう。そして、伝統にしていこう」

 「はい!」

 青年たちが答えた。

 伸一の言葉は、未来にわたる光明となって、「波濤会」メンバーの胸を射貫いた。

 彼らは、車で出発する伸一を見送った。

 しばらくすると、車中からの、伸一の伝言が伝えられた。

 「『波濤会』の写真を、私の写真と一緒に世界にも回そう」

 伸一の写真展は、“自然と平和との対話”等と題して、フランスのパリ、香港で既に開催され、大好評を博していた。

その自分の写真とセットで世界を巡回させることで、「波濤会」の写真にも、より高い関心を集めることができるのではないかと考えたのである。

 “どうすれば、弟子たちに光が当たり、檜舞台に送り出すことができるのか。皆の努力が報われるのか。また、皆の人生を大勝利させることができるのか……”

 伸一は、常に、そう考え、心を砕き続けてきたのである。

 弟子を陰で守りに守り、その勝利のために、あらゆる手を打つのが師匠である――これが、伸一の強き信念であった。