小説「新・人間革命」  6月22日 波濤58

山本伸一は、噛んで含めるように語った。

 「折伏や唱題を訴えることは大事です。しかし、相手が共感し、納得するには、まず、心をほぐし、友だちになっていくことが必要です。

 たとえば、『私のところに、遊びに来ませんか』と言ってみるのもいいでしょう。あるいは、最近読んで、おもしろいと思った小説の話をしてもいい。また、お父さんや、お母さんのことを聞いてもいいでしょう。

 ともかく、人間として打ち解け合い、理解し合っていくことから始めるんです。

 そして、たとえば、世間話から、人生には生き方の哲学が必要だという話をし、それから、教学を勉強しようとか、学会の会合に参加してみようと言ってみるんです。

 ところで、あなたは、今、幾つなの」

 「十九歳です」

 「それじゃあ、うまく指導できなくても仕方ないな。何度も、何度も失敗して、うんと苦労して、経験を積むんです。

それが、全部、成長の滋養になり、また、生涯の財産になっていきます。“当たって砕けろ”という思いで、行動していくんです。その覚悟がなければ、本物のリーダーにはなれません。

 でも、体は大事にするんだよ。みんな、大切な、私の娘だもの。学会の宝だもの……」

 最後の伸一の言葉に、皆、彼の深い慈愛を感じた。

 次々と質問の手があがった。

 「先生! 私は女性教育について研究してまいりました。その結論として、女子部、婦人部として、懸命に活動に励むことが、最高の女性教育になると痛感いたしました」

 伸一は、頷いた。

 「そうなんだよ。その通りです。

 日本の未来のためにも、女性教育をどうしていくかが大事になる。だから、これは、みんなで、さらに、研究していってください。

 それはそれとして、女子部、婦人部という組織自体が、最大の女性教育機関であることは間違いありません」