小説「新・人間革命」  6月24日 波濤60

 山本伸一は、皆の質問に答えて、組織としての運動の進め方などについて述べたあと、最後に、魂を打ち込むように訴えた。

 「組織といっても、人間関係です。あなたたちが、自分の組織で、一人ひとりと、つながっていくんです。単に組織のリーダーと部員というだけの関係では弱い。

周りの人たちが、姉のように慕ってくるようになってこそ、本当の人間組織です。

 組織を強くするということは、一人ひとりとの、信頼の絆をつくっていく戦いです。あなたたちが皆から、“あの人に励まされ、私は困難を克服した”“あの人に勇気をもらった”と言われる存在になることです。

 私も、そうしてきました。全学会員とつながるために、常に必死に努力しています。なんらかのかたちで、激励する同志は、毎日、何百人、何千人です。この絆があるから、学会は強いんです。

 その人間と人間の結合がなくなれば、烏合の衆になる。学会は、滅びていきます。この点だけは、絶対に忘れないでほしい」

 皆、真剣な顔で、瞳を輝かせていた。

 伸一は、笑みを浮かべた。

 「では、みんなで写真を撮ろう。これは、大事な、誓いの証明写真だ」

 伸一は、メンバーを前に並ばせ、自分は、後列に立った。フラッシュが光り、シャッター音が響いた。

 写真撮影が終わると、伸一は、皆に視線を注ぎながら言った。

 「もし、ほかの人が誰もいなくなっても、このメンバーが残ればいいよ。私がまた、一千万にするから。一緒にやろう。みんな、何があっても、退転だけはしてはいけないよ」

 さらに、伸一は、「青春会」の結成を記念し、皆が署名した色紙に、こう認めた。

 「その名も 芳し 青春会

 次の学会の核たれ 桜花たれ」

 この日、二十一世紀の新しき創価の女性運動の流れを開く、人材の核がつくられたのである。新世紀建設の布石がなされたのだ。