小説「新・人間革命」  7月29日 命宝26

山本伸一は、広島文化会館を回りながら、中国方面の中心者に、会館の施設について詳細に尋ね、会館建設の在り方を語った。

 「会館には、大勢の人が来るんだから、トイレなどは、なるべくゆったりと、数も多くした方がいいね。

集会用の広間が、どんなに立派でも、トイレの数が少なかったり、階段が狭く、急であったりすれば、人を大切にした設計とは言えない。

 学会の会館は、特に安全性を考慮していくことが大事です。

建物には、思想が表れる。人格が表れる。学会は、生命の尊厳を守る人間主義の団体なんだから、人への配慮が表れている設計にしていかなければならない」

 また、伸一は、広島県や中国方面の、草創期からの功労者は、誰かを尋ねていった。

 そして、こう提案し、指導した。

 「その功労者の代表を表彰するとともに、名前を冠した木を、広島文化会館に記念植樹してはどうだろうか。

 ともかく幹部は、“どうすれば、頑張ってこられた方を顕彰できるのか。喜んでいただけるのか”、また、“皆が希望と張り合いをもって活動に励めるのか”を、常に考え続けていかなければならない。

 幹部に、そうした意識がなく、無慈悲であれば、会員がかわいそうです」

 矢継ぎ早の指導であった。そこには、一瞬たりとも、時間を無駄にすまいという、強い気迫があふれていた。

 それが、「臨終只今にあり」(御書一三三七ページ)との覚悟で戦う、勇将の行動である。

 午後七時からは、県内の代表幹部らが参加して、広島文化会館の開館式が行われた。

 広島の繁栄を願っての厳粛な勤行のあと、伸一は、広島での本部総会に、国内外の代表が集うことから、お世話になる地元のメンバーに感謝を述べた。

さらに、中国方面のメンバーは、「日本一明るい中国」をめざして進んでいくよう、指針を示した。

 そのあとも、中国各県や海外の代表らと、食事を共にしながら、懇談、激励が続いた。