小説「新・人間革命」  7月30日 命宝27

広島の青年たちは、山本伸一の広島到着以来の奮闘を、直接、目にし、あるいは、その話を耳にしてきた。

 だからこそ、「一瞬一瞬が真剣勝負だ」との伸一の言葉が、強く胸に迫ったのである。

 八日、平和記念公園での献花を終えた伸一は、広島文化会館に戻り、夕刻、全国の各部代表幹部で構成される、中央幹部代表者会議に出席した。

 席上、「創価功労賞」「国際功労賞」、さらに、伸一が提案した、広島をはじめ、中国各県の広布功労者に対する表彰も行われた。

 伸一は、その一人ひとりと、真心を込めて、握手を交わした。

 彼は、この代表者会議では、懇談的に、指導者論などを語った。

 「広宣流布の活動を進めるうえで、大事なことは、幹部の率先垂範です。命令では人は動きません。全同志を心から包容しながら、自分の実践を通して、共に活動に励もうと、呼びかけていくことです。

 実践の伴わない観念的、抽象的な話では、人の心は打たない。しかし、行動、体験に裏打ちされた話には、説得力があり、共感を覚えます。この“共感”が、勝利の大波を広げていくんです。

ゆえに、幹部は、常に自らが、真っ先に動くことです。

 また、戦いに臨んだならば、幹部には、勝利への執念と、自分が一切の責任をもつのだという気迫が、ほとばしっていなければならない。

皆が一丸となって勝負すべき時に、幹部でありながら、本気になって戦おうとせず、事の成り行きを静観しているような態度は、最も卑怯だと、私は思う。

 それは、皆のやる気を失わせ、師子身中の虫となるからです。大聖人が『日蓮が弟子の中に異体異心の者之有れば例せば城者として城を破るが如し』(御書一三三七ページ)と仰せの姿です。

その罪は重いと言わざるをえない」

 伸一は、新しい出発にあたり、幹部自身の革命が最大の課題であると考えていたのだ。