小説「新・人間革命」  8月19日 命宝43

山本伸一は、海外メンバーに、次々と声をかけ、レイを贈るなどして励ましていった。

 メンバーのなかに、ウルグアイから来日した四人の青年がいた。男性二人、女性二人である。

 同行の幹部が、伸一にメンバーを紹介した。四人のうち、一人は、日系人の男性で、あとの三人は、スペイン・イタリア系などのウルグアイ人であった。

 ウルグアイは南米の南東部にあり、ブラジルとアルゼンチンに隣接する国である。日本とは、ほぼ地球の反対側に位置する。いわば、最も遠い地域から、参加した青年たちであった。

 伸一は、じっと、メンバーを見つめると、厳しい口調で言った。

 「まず、今後五年間、退転せずに頑張りなさい。今は苦しみなさい。本当の師子にならなければ、広宣流布などできない!」

 周りにいた日本の幹部たちが、予想もしなかった言葉であった。皆、伸一は、青年たちの訪日を讃え、ねぎらいと包容の言葉をかけるものと思っていたのだ。

 ――ウルグアイは、以前は、中南米を代表する民主国家として知られていた。だが、経済の停滞から社会不安が高まり、一九六〇年代には都市ゲリラ活動が活発化した。

そして、ゲリラ鎮圧のために、次第に軍部の力が強まり、この当時は、事実上、軍政となっていたのである。

 伸一は、これまで、軍政下にある国々の状況を、つぶさに見てきた。会合なども自由に開けないケースが多かった。また、学会への誤解から、警戒の目が向けられ、弾圧の対象とされてしまうこともあった。

 そのなかで広宣流布を進めるのは、決して容易なことではない。まさに「日興遺誡置文」に仰せの、「未だ広宣流布せざる間は身命を捨て随力弘通を致す可き事」(御書一六一八ページ)との覚悟が必要となる。

この不惜身命の信心こそが、いかなる逆境もはね返し、勝利の旗を打ち立てる原動力なのだ。