小説「新・人間革命」  8月25日 命宝48

“なんとしても、山本先生を呉にお迎えして、呉の同志に会っていただくのだ!”

 こう決意して、猛然と祈り始めた、一人の婦人がいた。呉総合本部の婦人部の中心者である竹島登志栄であった。

 彼女は、広島で本部総会が開催されることが決定すると、本部総会が大成功に終わるように、唱題を開始した。さらに、“山本先生が広島に来られるなら、呉にも来ていただきたい”との祈りが加わっていった。

 ただならぬ気迫を漂わせ、懸命に唱題する竹島を見て、婦人部のメンバーが訳を尋ねた。そして、この婦人も、総会の成功と伸一の呉訪問を願って、唱題するようになった。

 その話を聞いた呉の同志は、“そうだ。私も頑張ろう!”と、皆が真剣に唱題に励むようになっていった。題目の渦が巻き起こっていったのである。

 祈りに勝る力はない。祈りは、一切を変えていく原動力である。勝利への強き祈りの一念から、大確信も、緻密な計画も、勇気ある行動も生まれるのだ。

 唱題を重ねるなかで、呉の同志は思った。

 “山本先生においでいただくからには、弟子として、「私は戦いました。勝ちました!」と、胸を張って報告できる自分でなければならない。それが師弟の道ではないか!”

 活動にも、一段と力がこもった。

 本部総会が近づくにつれて、会館の清掃も念入りに行われ、庭にも手を入れた。

 “先生に来ていただきたい”との思いは、やがて“先生は来てくださるだろう”という希望的観測となり、さらに“絶対に来られる”との、確信に変わっていった。

 十一月七日、山本伸一は広島入りし、八日には原爆死没者慰霊碑に献花。九日には本部総会が行われ、大成功のうちに幕を閉じた。

十日は、海外メンバーの歓迎フェスティバル、原爆犠牲者の追善勤行会などが続いた。

 呉の幹部たちは、日程から推測して、“山本先生は、十一日には、きっと呉においでくださるにちがいない”と思った。