小説「新・人間革命」  12月16日 未来24

入園式では、最初に、園長の館野光三があいさつに立った。

 「皆さん、こんにちはー」

 園長の呼びかけに、「こんにちはー」という、はちきれんばかりに元気な園児の声が、はね返ってきた。

 館野は、第一回の入園式を、創立者を迎えて開催できた喜びを述べ、教職員を紹介。そして、札幌創価幼稚園を、「つよく ただしく のびのびと」とのモットーを実現する理想の幼稚園としていきたいと語った。

 次いで、学校法人創価学園の理事長である青田進が、幼稚園の開園に向け、献身的に尽力し、支援してくれた功労者の代表に、感謝状と記念品を贈呈した。

 そして、札幌創価幼稚園の第一期生は、二十一世紀を迎えるころには三十歳前後になっていることを語り、二十一世紀を担う平和社会建設のリーダーを育てることが、この幼稚園設立の目的であると述べた。

 未来を思えば、希望の翼が広がる。教育という未来を創る事業は、希望と共にある。

 その時である。「わぁーん」という泣き声がした。園児の一人が泣き出したのだ。

 山本伸一は、さっと、園児の側に行き、抱き上げて、自分の膝の上に乗せ、ジュースを飲ませた。てんやわんやの入園式である。

 子どもを育てることは、汗まみれ、泥まみれの労作業だ。その現実のなかで格闘し、理想に向かって、進歩、向上させていくなかにこそ、教育の喜びがある。

 青田は、「これからが、いよいよ建設の時であります。創価幼稚園の原点となる、よき伝統を築き上げていくためにも、保護者と教職員が一体となって努力していってください」と訴え、早々に話を結んだ。

 最後に、伸一が贈った花束を、園長の館野が、「創立者の山本先生から、花束のプレゼントです」と言って、年長クラスと年少クラスの代表二人に手渡した。自分の背丈と同じぐらいの花束を抱え、はにかみながら笑みを浮かべる、園児の顔が愛らしかった。