小説「新・人間革命」12月17日 未来25

入園式に続いて、創立者山本伸一も加わり、園児たちの記念撮影が行われた。

 四列に並んでの撮影であったが、一回目の組は、比較的スムーズに終わった。

 二回目は、並ぶのに手間取った。ようやくみんなが並んだ時、一人の女の子が泣き始めた。伸一は、「よしよし」とあやしながら、この子を自身の膝の上に乗せた。

 これで撮影できるかと思いきや、今度は、別の園児が、大きな声で言った。

 「おしっこ!」

 母親が飛んで来て、園児を連れてトイレに走った。その間に、伸一の膝の上に乗っていた子が泣きやみ、歩き始めようとした。

 伸一は、つかまえて、抱き締める。

 ここで、シャッターが切られた。すると、廊下の方から声がした。

 「おしっこの子が、入っていませーん」

 爆笑が広がった。

 にぎやかな記念撮影が終了すると、園児たちは、遊戯室から、それぞれの保育室に向かった。

 だが、この移動が、大変であった。列から外れて迷う子もいて、たちまちロビーは園児であふれた。子どもたちが、騒ぎだした。

 見かねた伸一は、マイクを手にした。

 「ばら組さんは、いますか! はい、こっちに来て、真っすぐ歩いて行こうね。

 それから、ひまわり組さんは、手をあげてください!」

 「はーい」と大勢の子が手をあげた。

 「はい、そのまま、一列に並びましょう」

 その姿を見て、学園理事長の青田進は、ハッとした。

 “一旦緩急の時は、立場など関係なく、現場に飛び込んで働くんだ。ただ傍観し、手をこまぬいていては、絶対にならない――先生は、そのことを、学園の私たち首脳に、身をもって教えてくださっているんだ!”

 青田も、子どもたちを誘導した。

 伸一の率先垂範の行動は、大人たちへの教育でもあった。