「新・人間革命」  2月27日 学光27

通信教育で単位を修得することは、佐江一志が予想していたより、はるかに困難であった。リポートも思うように進まず、いつになったら大学を卒業できるか、わからなかった。

 彼は、悩んだ末に、二部への転籍を考え、母親に相談した。

 「真剣に考えているんだね。いいんじゃないかい。一度、決めたことは、どんなことがあってもやり抜くんだよ。信心を根本に、悔いのない青春を送るんだよ」

 母の励ましで力を得て、彼は、大学の二部に移った。しかし、仕事の関係で、まともに授業に出られるのは、定休日の月曜日だけであった。“月曜日の男”というのが、佐江につけられたニックネームであった。

 “果たして自分は、このまま学業を続けられるのか。本当に大学の教員になることができるのだろうか……”

 学生部の夏季講習会に参加した時、御書講義を担当した幹部に、自身の苦境を語り、どうすればよいか、質問した。

 担当幹部の指導は、厳しかった。

 「君の言葉には、本気で現在の境遇と戦う決意が感じられません。大変だ、大変だという気持ちに負けているのではないか。

大変だからこそ、自分はやってみせるという意欲がない。題目を唱え抜き、自分はこうして学業を成就したという道を開くんです。それが、信心ではないですか!」

 甘さを、痛烈に指摘された思いがした。

 講習会が終わって、帰途に就こうとした時、学生部長が佐江に声をかけた。

 「佐江君、君が指導を受けた担当幹部が、君のことを、山本先生に報告したところ、先生は色紙をくださったよ」

 そこには、「勇気」と認められていた。

 佐江の全身に電撃が走った。まさに、自分に足りなかったのは、勇気であると思った。

 この瞬間、彼の一念が変わった。すると、断じて勝ってみせるという挑戦の心がみなぎるのであった。一念の転換こそ、自分の境遇を変え、すべてを変革していく原動力となる。