小説「新・人間革命」  4月17日 勇気14

田島尚男は、二部学生大会に出席して、市役所の職員になろうと決めた。学会で身につけた奉仕の精神をもって、市民を守り、社会に貢献することで、仏法者の生き方を示していきたいと思ったのである。
 彼は、市役所の採用試験を受けて合格し、翌年、職員となった。
 田島は、さまざまな部署を経験した。常に、挑戦の毎日であった。
 ぼくは飛翔会だ! その力を発揮するチャンスじゃないか!
 そう思うと、闘志がわいた。また、幾つもの課題に挑戦することを余儀なくされた二部学生時代を思えば、むしろ余裕さえ感じた。
 まさに、山本伸一のメッセージ通り、青春時代の苦闘が、「人生の盤石な基盤」を構築していたのだ。
 田島は、ゴミの減量対策やコミュニティーFM放送局の立ち上げなど、どの部署にあっても、大きな実績を残し、やがて、市役所の要職を担っていくことになる。
  「飛翔会」のメンバーとなった二部学生のパワーは、随所で爆発した。キャンパスで、地域で、仏法対話の渦が巻き起こり、励ましの輪が広がっていった。
 新聞販売店に住み込む、ある学生部員は、学内の友の激励に奔走し、よく終電車に乗り遅れてしまうことがあった。そんな時は、一時間、二時間とかけて、歩いて帰った。
 真冬、ジャンパーの襟を立て、寒風に吹かれながら販売店に戻っても、店のシャッターは、まだ閉まっていた。
 仕方なく、街灯の下で本を読み、店が開くのを待つ。指先に息を吹きかけ、足踏みをし、寒さをしのいだ。
 しかし、彼に悲哀はなかった。いや、心は誰よりも燃えていた。師の山本伸一と同じ使命の道を歩む誇りと、今の一日一日が、栄光の人生の基盤をつくっているのだという、強い確信があったからである。
 希望は、逆境をはね返す前進の活力となる。