小説「新・人間革命」  4月19日 勇気15

 最も厳しい状況にある人が、決然と立ち上がり、勇躍、勝利の劇を演じるならば、万人に勇気と希望と確信を与える。苦境のなかで戦っているということは、その重大な使命を担っているということなのだ。
 二部学生は、勉強時間も、まとまって取ることは、なかなかできない。通勤、通学の時間や、会合の開始を待つわずかな時間でも、寸暇を惜しんで本を開いた。いやでも彼らの集中力は培われていった。逆境で戦えば、短日月でも力は磨かれる。向上心強き人には、逆境こそが最高の恵みとなるのだ。
 時間のないなかで、懸命に学会活動に励む二部学生に触れると、昼間部に学ぶ学生部員は、自分たちは、もっと、もっと頑張らねばならないとの思いを強くしていった。
 この二部学生の活動が牽引力となり、一九七七年(昭和五十二年)五月、全国各地で行われた部大会をもって、念願の学生部精鋭五万の結集が成就するのである。
 「飛翔会」の結成から、半年ほど過ぎたころ、二部学生のなかから、「勤労学生主張大会」を開催しようとの声が起こった。
 世間では、マスコミを中心に、若者に対して、しらけ、無気力、現実逃避といった見方がなされていた。また、若者自身、それをよしとしている風潮があった。
 それだけに、社会建設の使命を自覚し、崇高な理想に燃えて、日々、現実のなかで格闘している自分たちの生き方、考え方を、同世代の青年に、さらに、広く社会に、訴えたかったのである。
 人間の生きる姿のなかにこそ、思想・哲学の実像がある。
 戸田城聖は、生前、山本伸一に語っていた。
 「創価の青年の逞しさを吹き込んでこそ、今の青年層を力強く蘇らせることができる」
 また、二部学生たちには、この主張大会を通して、時代を変革する仏法哲理を社会に示し、真実の人間道を説く師匠・山本先生の教えを宣揚したいとの強い思いがあった。