小説「新・人間革命」 5月 20日 勇気41

 山本伸一が、四番目に、日ごろからの交流の大切さを訴えたのは、学会の活動においても、また、交友においても、大事なのは人間関係であるからだ。
そして、その人間関係は、日々の交流の積み重ねのなかで築かれていくものだからである。
 足繁く通って対話する。あるいは、電話や手紙なども含め、意思の疎通を図り、励ましを送る。その不断の努力のなかに、信頼が育まれ、強い人間の絆がつくられていくのだ。
 五番目に彼が、「その家庭を大切に」と語ったのは、リーダーが、メンバーの各家庭の状況を理解し、配慮をめぐらしていってこそ、皆が無理なく活動に励んでいくことができるからである。
 皆、それぞれに家庭の事情がある。食事や就寝時間など、生活の時間帯も、家庭によって異なる。
さらに、病気の家族がいるお宅もあれば、受験生がいるお宅もある。また、家族が未入会の場合もある。
訪問する際には、事前に連絡をして伺うなどのマナーも、当然、心掛けなければならないし、玄関先で会話をすませるなどの配慮も大切である。
 また、自宅を座談会場などとして提供してくださっている家庭に対しては、特に、こまやかな心遣いが必要であろう。
 最後に、伸一が、「その人の立場を大切に」と訴えたのは、すべての人を尊敬、尊重していくことは、仏法者としての、生き方の根本姿勢であるからだ。
それを、自分の感情で人を叱ったり、後輩に対して威張り散らすようなことがあっては、絶対にならない。
 大聖人は「忘れても法華経を持つ者をば互に毀るべからざるか、其故は法華経を持つ者は必ず皆仏なり仏を毀りては罪を得るなり」(御書一三八二ページ)と言われている。
 広宣流布に生きる同志は、皆、等しく尊厳無比なる存在である。互いに尊敬し合う心の連帯が、創価学会なのだ。
 伸一は、リーダーの留意点として、この六項目の指針を発表し、皆の健闘を讃えると、本部幹部会の会場を後にしたのである。