小説「新・人間革命」 5月 27日 勇気47

 「ありがとう。この『人間革命の歌』は、新しい人間文化創造の原点になる歌だ。
 では、合唱団の皆さんと記念撮影しよう」
 山本伸一は、一緒にカメラに納まった。
 このあと彼は、海外メンバーの代表らと、夕食を共にしながら、打ち合わせを行った。その席で、「人間革命の歌」を録音したテープをかけ、皆に紹介した。
 何度もテープを聴くうちに、歌詞にも、曲にも、また、手直ししたい個所が出てきた。
 打ち合わせが終わると、伸一は、本部に戻って、居合わせた幹部にテープを聴かせた。
 「どうかね。率直な感想を聞きたいんだ。感じたままを言ってもらいたい」
 伸一は、皆の声、意見を大切にした。衆知は、時に仏智の輝きを放つからだ。
 その幹部は、答えた。
 「すばらしいと思いますが、なかほどに平板なリズムが続くので、その辺りを、もう少し変えた方がよいのではないかと思います」
 「私も、そう感じていたところなんだよ。よし、やり直しだ!」
 ――「完全なるものへ、あるが上にも完全へと。これが我らのすべてに対する祈りである」とは、学会創立の父・牧口常三郎の信条であった。
 伸一は、作曲の応援をしてもらった音楽教師の青年らに、もう一度、来てもらうことにした。午後八時過ぎ、音楽教師が駆けつけた。
 「何度も足を運ばせて、申し訳ないね。テープを聴き直してみると、歌詞にも、曲にも、納得できない個所があるんだよ。
 まず、一番の歌詞の『平和と慈悲との 旗高く』だ。ここは、『正義と勇気の 旗高く』にしようと思う。
 平和、慈悲といっても、仏法の正義を断じて貫こうという勇気から始まる。戸田先生は、『慈悲に代わるものは勇気です。勇気をもって、正しいものは正しいと語っていくことが慈悲に通じる』と、よく言われていた。
臆病を打ち破り、勇気をもって戦いを起こしてこそ、自身の人間革命がある」