小説「新・人間革命」 6月 8日 敢闘4

「青春会」のメンバーは、瞳を輝かせ、真剣な表情で、山本伸一の話を聞いていた。
 伸一は、力のこもった声で語った。
 「信心をしていても、当然、生老病死の四苦はあります。
しかし、広宣流布のための人生であると心を定め、強盛に信心に励んでいくならば、わが生命が大宇宙の根本法たる妙法と合致し、あらゆる苦悩を悠々と乗り越えていくことができるんです。
 信心に励んでいる生命の大地には、福運の地下水が流れていく。大風や日照りの日があっても、やがては、その生命の大地は豊かに潤い、幸の実りをもたらします。
 ともかく、何があろうが、生涯、広宣流布に生き抜いていくことです。いざという時、『よし、やるぞ!』と、決然と立ち上がり、勝利の旗を打ち立て、学会を守り抜いてください。
そのための『青春会』です。二十一世紀の広宣流布の責任を担うのが皆さんです。その使命を絶対に忘れないでいただきたい」
 伸一は、未来の広宣流布を託すつもりで、全力で激励を重ねた。
 出発間際まで、「青春会」の激励を続けた伸一は、それから、三重の中部第一総合研修所に向かった。
 列車を乗り継ぎ、研修所に到着した時には、午後五時を回っていた。伸一が、この研修所を訪問するのは、初めてのことであった。
 研修所は、したたる緑の中にあった。布引山地の美しい山並みが、日没前の陽光に照らされていた。
 彼は、直ちに研修所内を視察した。研修所のなかに建てられた三重記念館の前には、初代会長・牧口常三郎の「一人立つ精神」の文字を刻んだ石や、伸一の「共戦」の文字を刻んだ石もあった。
 また、第二代会長・戸田城聖の「広布の誓」の文字や、牧口の「創」の字が刻まれた石もあった。
 歴代会長の精神を偲ぶために、伸一の提案で設置されたものである。