小説「新・人間革命」 6月19日 敢闘14

山本伸一は、中部第一総合研修所に滞在して、中部の新章節を開くために、人材の育成に全精魂を注いだ。
 七月二十四日には、研修所内をくまなく回った。安全管理や研修会の運営状況を、自らの目で確認しておきたかったのである。
 館内の各部屋や廊下なども入念にチェックした。電気がつけっ放しの場所もあれば、清掃が行き届いていない個所もあった。
 伸一は、中部の幹部らに、それら一つ一つの事柄について、細かくアドバイスした。
 「研修所も、会館も、会員の皆さんの浄財によって運営されている。したがって、使わない電気をつけっ放しにしておくようなことがあってはならない。
 みんなが、無駄をなくそうと心掛けるとともに、互いにあなた任せにするのではなく、担当者、責任者を明確にすることです。
 つまり、どの場所の電気は、誰が責任をもつのか、戸締まりは誰がするのか、清掃は誰がするのか、そして、それを最終点検するのは誰なのか――。
 ただ、『気をつけよう』とか、『頑張ろう』といった抽象的なことではだめです。事故などを防ぐには、具体的な責任の明確化が大事になる」
 あいまいさがあれば、魔の付け入る隙を与えてしまう――それが、若き日から青年部の室長として、全責任を担って学会の一切の運営にあたってきた、伸一の結論であった。
 「また、幹部の祈りも具体的でなければなりません。研修会が行われるならば、集って来た人たちが、風邪などをひかずに、無事故で、元気に有意義な研修ができるように、真剣に祈っていくことです」
 さらに、伸一は、こう語った。
 「研修所にいる役員も多すぎます。みんな忙しいし、休みを取って、ここに来るのも大変です。
それに、数を頼んで、安心しているところから、かえって、油断が生じ、事故を起こしてしまうことが多いんです。少数精鋭での運営を心掛けなければならない」