小説「新・人間革命」 6月21日 敢闘15

山本伸一は、七月二十四日にも、中部第一総合研修所での勤行会に出席した。二十五日には、ドクター部、教育部の代表や、三重の功労者らと共に記念撮影し、激励を重ねた。
 そして、二十六日には、研修所で夏季講習会を開催していた、中部学生部の代表を励ましたのである。
 伸一は、前日、彼らが研修所に到着したことを聞くと、すぐに伝言を託した。
 「君たちは、将来、学会の、また、社会のリーダーに育っていく人なんだから、民衆を守り、民衆に仕えていく精神を、しっかり学んでいってもらいたい。
 その意味から、研修会の期間中は、寸暇を見つけて、研修所の草取りや清掃に、汗を流すようにしてはどうか。学生部員の労作業で、会員の皆さんに、研修所を気持ちよく使っていただくようにする意味は大きい。
 また、三重記念館に展示された歴代会長の記念の品々も、よく心にとどめてください」
 この伝言を聞いた学生部員は、御書講義や教学試験などの諸行事の合間に、喜々として研修所の清掃作業に取り組んだのである。
 その報告を受けると、伸一は言った。
 「みんな、清掃に頑張ってくれたのか。ありがたいね。学生部員は、将来、全員が、大リーダーになる大事な人たちだ。
だからこそ、会員のため、民衆のために、陰で労作業に励み、尽くしていくという精神を、身につけてほしいんだよ」
 ――「大学は、真理を追求し、人類に奉仕することを願い、人間性を端的に表出しようとするものです」(注)とは、ドイツの哲学者ヤスパースの至言である。
 しかし、大学をはじめ、社会から、その教育は失われつつある。奉仕の精神が欠落した青年たちが、指導者になっていったら、二十一世紀は暗黒の世界となろう。
 だからこそ伸一は、学生部員たちに、この講習会を通して、奉仕することの大切さを、その意義と喜びを、教えておきたかったのである。そこに、善の創造があるからだ。
 
■引用文献:  注 ヤスパース著『大学の理念』福井一光訳、理想社