小説「新・人間革命」 6月22日 敢闘16

 中部第一総合研修所の夏季講習会に参加している学生部員は約百二十人で、一年生と、入会間もないメンバーがほとんどであった。
 それを聞くと、山本伸一は言った。
 「ぜひ、みんなと会って、励ましたいな」
 そして、この二十六日の夕刻、懇談会をもったのである。
 メンバーと記念撮影したあと、庭の芝生の上で語らいが始まった。
 「ここで、ゆっくり話をしよう。この夏季講習会の責任者は誰だい」
 「はい。中部学生部長の長田耕作です」
 高校で数学の教師をしているという、メガネをかけた生真面目そうな青年が立った。
 「そうか。どうもお疲れ様! みんな、掃除もしてくれたんだね。ありがとう!
 小さなことであっても、行動を起こしていくことが大事です。行動することによって、自分の思いを人びとに伝えていくことができるし、自身の心を鼓舞することもできる。行動こそ、社会を築く力です。
 ところで今日は、まず、みんなで『厚田村』のテープを聴こうよ」
 「厚田村」は、伸一が一九五四年(昭和二十九年)夏、師の戸田城聖と共に、戸田の故郷である北海道・厚田村を訪れた折に、師の偉大な生涯に思いを馳せて作った詩であった。
それに、音楽教師をしていた青年が、曲をつけたものである。
 用意されていたカセットデッキから、荘重な調べにのって、「厚田村」の歌が流れた。
 
  北海凍る 厚田村  吹雪果てなく 貧しくも………
 
 北海道から一人旅立ち、やがて、広宣流布の大業に生涯を捧げ、人類の幸福と平和の夜明けを開いた戸田城聖――伸一は、その清廉にして気高き「志」を、若き青年たちに受け継いでほしかったのである。
 人生を大成させるかどうかは、「志」の有無によって決定づけられてしまう。