小説「新・人間革命」 7月9日 敢闘31
山本伸一は、東京創価学会の大発展を祈りながら、さらに東京の青年に訴えた。
「広宣流布の戦いは、皆が主役です。皆が一人立ってこそ、本当の力が出る。それぞれは力があっても、力を出し切らなければ、ないのと同じ結果になってしまう。
’76東京文化祭は、そうした、一人立つ精神を示し、教えるものにしてほしい。
あの『人間革命の歌』の、『君も立て 我も立つ 広布の天地に 一人立て』という言葉は、東京の皆さんにこそ贈りたいんだ。
しかし、国主の諫暁には、最も適した地であるし、一国の中心地で敢然と妙法の旗を掲げ、正義を宣揚してこそ、広宣流布の成就もある。
それゆえに、法難を覚悟のうえで、あえて鎌倉で戦われた。今日、その使命を担っているのが、首都・東京の同志だ。
本陣は、堅固であり、無敵の強さがなければならない。したがって、本陣・東京の文化祭は、不屈の闘魂を表現することも大事だね。楽しみにしているよ」
居合わせた東京のメンバーは、声をそろえて、「はい!」と答えた。
伸一は、皆の顔を見渡した。そのなかに大阪の青年を見つけると、声をかけた。
「大阪は、八月二十八日と二十九日だね」
「はい。大阪、奈良、和歌山の三府県で、’76関西文化祭として、関西戸田記念講堂で開催いたします」
「私は、どうしても出席できないが、メッセージを送ります。大成功の報告を待っています。皆さんにくれぐれもよろしくね。
関西魂を、いかんなく表現する文化祭にするんだよ。関西魂とは、勝利への執念です。民衆の幸福を実現するまで、何があろうが、“一歩も引かぬ”“あきらめるものか”という闘魂です。それが私の心です」
伸一は、一言一言、生命を振り絞り、言葉を紡ぎ出すように、青年を励ましていった。