小説「新・人間革命」 7月14日 敢闘35

題目を唱え、折伏に励む――そこに、地涌の菩薩の生命が脈動し、歓喜があふれる。
 富島トシは、学会活動をするなかで、この信心で、必ず自分は、幸せになれるんだ!という手応えを感じた。
 子どもたちは、信心を始めた母親が、日ごとに明るく、元気になっていく姿に目を見張った。生活は、貧乏のどん底である。それなのに、本当に楽しそうなのだ。
 彼女は、来る日も、来る日も、弘教に懸命に汗を流した。このころ、喜界島にも町営バスが通るようになったが、島の外周を走る線しかなく、本数も少なかった。
 二時間、三時間と歩いて折伏に出かけた。時には、下駄が割れてしまい、裸足で歩いて、帰って来たこともあった。
 また、仏法の話をすると、相手が怒りだして、水をかけられたり、塩を撒かれたりすることもあった。鎌を持って追いかけられたこともある。
 でも、彼女は、めげなかった。どんなに反対され、なんと言われようが、ニコニコしながら、仏法を語って歩いた。
 教学を学び、「行解既に勤めぬれば三障・四魔・紛然として競い起る」(御書九一六ページ)の通りだと、実感したからだ。
また、「法華経を信ずる人は冬のごとし冬は必ず春となる」(同一二五三ページ)の御聖訓を確信していたからだ。
 といっても、富島は、子どものころ、満足に学校に通えず、あまり読み書きができなかった。御聖訓も、島に来てくれる幹部の話を聞き、耳で覚えたものだ。
 さらに、学会活動に励むなかで、読み書きの必要性を痛感し、漢字を覚えていった。
 広宣流布の使命に生きようという一念が、自分の苦手の壁を打ち破っていったのだ。
 ロシアの文豪トルストイは言った。
 「人生とは、変化し、成長し、限界を広げることである」(注)
 広宣流布という最高最大の目標に生きる時、自分のすべては生かされ、あらゆる可能性が開花するのだ。
 
■引用文献:  注 『レフ・トルストイ全集第88巻』テラ出版社(ロシア語)