小説「新・人間革命」 7月17日 敢闘38
山本先生とお会いして、喜界島のことをご報告したい……”
富島トシは、朝な夕な、そう御本尊に祈り続けてきた。
そして、この一九七六年(昭和五十一年)八月二十三日、九州総合研修所で、山本伸一と会うことができたのである。
「ようこそ! ようこそ、いらっしゃいました。“喜界島のお母さん”に、お会いできて嬉しい」
伸一は、一緒に勤行したあと、しばらく懇談の時間をもった。
「あなたのことは、鹿児島の幹部から、詳しく伺っております。苦労を重ねて喜界島の広宣流布の基盤をつくってくださった。本当にありがとう。心から感謝いたします」
その言葉を聞くと、富島は、ぎゅっと唇をかみしめた。目には、涙があふれていた。
日ごろ、伸一と会ったら、あれも報告したい、これも報告したいと思っていたが、実際に、伸一を目の当たりにすると、感極まって、何も言えなかった。
「わかっています。全部、わかっていますよ。あなたの心は、痛いほどわかります。
本当によく頑張ってこられた。悔しい思いもされたでしょう。辛い思いもされたでしょう。そのなかで、法のため、社会のために戦ってこられたこと自体、あなたが仏であり、地涌の菩薩であることの証明なんです。
広宣流布のために流した汗は、福運の結晶となって、永遠に自身を荘厳します。
広宣流布のために動き抜いたならば、来世は、強く健康な体を授かるでしょう。勇んで苦闘に挑み抜いた人には、幸福の大勝利が待っています。それが、仏法の因果の理法です。
どうか、これからも喜界島の太陽として、幸福の光で、みんなを照らしていってください」