小説「新・人間革命」 7月24日 敢闘44

二十四日の午後五時過ぎ、山本伸一は、車で九州総合研修所を出発し、国分市街(当時)をめざした。研修所に近い清水総ブロック、国分総ブロック合同の代表者勤行会に出席するためである。
 切り立った岩が迫る道を抜け、緑の林のなかを、車は進んでいった。
 伸一が、最初に向かったのは、清水総ブロック長の本吉勝三郎の家であった。
 本吉は、研修所の整備や清掃をはじめ、役員として陰で研修会を支える、地元ンバーのグループ「霧島会」の一員である。
 伸一は、数日前、研修所の一角で、研修会参加者のために、饅頭をふかしている、五十代半ばの壮年を目にした。
 伸一は、声をかけた。
 「いつも、ありがとうございます。ご尽力に感謝します。ところで、家は、どちらですか」
 「はい、すぐ下です」
 すぐ下といっても、車で四十分ほどの距離である。
 「それなら、いっぺん、御礼に、おじゃまさせていただきます」
 本吉は、喜色を満面に浮かべて言った。
 「はい! お待ちしております」
 伸一は、すぐに日程を具体化した。日時をあいまいにしておけば、言葉だけで終わってしまうことになりかねないからだ。
 「私の入信記念日が二十四日だから、その日ではどうですか」
 「そんな大切な日に……」
 側にいた、本吉の妻の和美が言った。
 「近くのメンバーも、先生にお会いしたくて、皆、真剣に祈っております。メンバーとも、ぜひ、お会いしてください」
 「わかりました。お宅にも伺うし、皆さんともお会いして、勤行もしましょう。なんでもやらせてもらいます」
 一瞬を疎かにせず、真剣勝負で行動に行動を重ねていくなかで、栄光の歴史がつくられる。一歩一歩の歩みは小さくとも、その積み重ねのなかにこそ、大いなる前進があるのだ。