小説「新・人間革命」 7月26日 敢闘45
さあ、戦おう!”
山本伸一は、そう心で自分に呼びかけながら、本吉勝三郎の家の前で車を降りた。
本吉の家は、繁華街の一角にある平屋建てであった。
午後六時前、到着した伸一を、本吉をはじめ、家族五人で出迎えてくれた。
皆で題目を三唱したあと、座卓を囲んで懇談が始まった。
伸一は、家族の健康状態や家庭の状況などを尋ねていった。
彼は、学会員と接する時には、“体は大丈夫か”“生活は安定しているだろうか”“子どもなど、家族の問題で悩んではいないだろうか”といった事柄に、常に細心の注意を払っていた。
人は、皆、なんらかの悩みを抱えている。その悩みに、喜々として挑戦し、乗り越えていくための信心であるからだ。
また、そうした問題を解決していくなかで、自身の生活の足場が固められていくし、さらに、その体験が、仏法への揺るぎない確信となっていくのである。
そして、それによって、広宣流布の活動に、一段と力を注いでいくことができるようになるのだ。
伸一は、本吉の仕事について尋ねていった。
本吉の家は、かつては地主であったが、第二次大戦後の農地改革で、広大な土地を失ってしまった。
本吉は、建築業や割烹料理の店など、さまざまな事業を手がけてきたが、どれも、うまくいかなかった。今は、不動産業の友人の手伝いと、家の一部を貸店舗にして、その収入で生活をしているという。
伸一は、親身になって、将来の方向性について語り合った。
彼は、本吉の性格から見て、不動産業が合っているようには思えなかった。また、体も無理が利く年代ではない。
幸いに、彼の家は中心街にあり、店舗としての立地条件がよいことから、家を増改築し、貸店舗を増やしてはどうかと、アドバイスした。