小説「新・人間革命」 7月27日 敢闘46

山本伸一は、大学受験をめざし、浪人中であるという本吉勝三郎の三男にも、励ましの言葉をかけた。
 伸一は、大福運に包まれた、和楽の家庭を築いていくよう念じながら、彼が揮毫した、「共戦」と「安穏」の色紙を、本吉夫妻に贈り、皆で一緒に記念撮影した。
 本吉は、この時の伸一のアドバイスを実践し、家を二階建てに増改築。一階を貸店舗にした。その家賃収入で増改築のローンも返済し、生活は安定していったという。
 このあと、山本伸一は、清水、国分の二総ブロックの代表が集まっている時田勇雄の家に向かった。本吉の家から、ほんの百メートルほどの距離であった。
 時田も「霧島会」のメンバーであり、派遣で九州総合研修所のある牧園総ブロックの、総ブロック長をしていた。彼は、中華料理店を営み、店の裏にある自宅を、座談会などの会場として提供していたのである。
 時田の家には、八十人ほどの代表が集い、今か今かと、伸一の到着を待っていた。
 すると、縁側の方から、「やあ、こんばんは! おじゃまします」という声が響いた。
 伸一が部屋に入ると、拍手が起こった。
 「皆さん、こんばんは! 山本です。いつも、大変にお世話になっております。ありがとうございます」
 こう言って彼は、深々と頭を下げた。
 「皆さんが、ますますご健康、ご長寿で、ご一家が安穏でありますよう、いつも、いつも、ご祈念しております」
 人間として、とりわけリーダーとして大事なことは、常に「感謝」と「賞讃」の心をもち、それを、素直に口に出せるかどうかである。どんなに、心で思っていても、言葉や振る舞いとして表現されなければ、心は通じない。
 大聖人は御書の随所で「ありがたし・ありがたし」などの言葉を記されている。相手を讃え、感謝を語るところから、心と心は結ばれ、強固な絆が結ばれていくのである。